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潤滑方法転がり軸受の潤滑方法は、一般的にはグリース潤滑と油潤滑による方法があります。また、特別な場合としては、固体潤滑剤を使用する方法もあります。一般に、グリース潤滑は密封構造が簡単で、経済的であることが最大の利点であり、多く使用されています。また、一度グリースを充てんすれば、比較的長期間補給しなくても使用できます。しかし、油と比較すると流動抵抗が大きいので、攪拌熱も大きく、放熱性、冷却能力に劣ります。油潤滑は、流動性がよいので熱の放散がよく、高速回転にも適します。更に、油中のごみのろ過が簡単なため、ごみによる音響、振動の発生を防止することもでき、軸受寿命を増大させます。また、運転条件に適した種々の潤滑方法が選定できるなど多くの利点があります。しかし、油漏れに対する十分な配慮が必要です。グリース潤滑と油潤滑の選定指針として、両者を比較すると表34のようになります。なお、IKO球面滑り軸受の潤滑剤については、459ページを参照してください。潤滑潤滑の目的軸受の潤滑の主な目的は、軸受内部の摩擦と摩耗を減らし、発熱や焼付きを防止することにあります。したがって、潤滑剤と潤滑方法の適・不適が、軸受性能に影響を与えますので、それぞれ、使用条件に適した選定をする必要があります。潤滑の効果として次の事項をあげることができます。❶摩擦と摩耗の減少軸受を構成する軌道輪、転動体及び保持器の相互に接触する部分において、金属接触を防止し、また、転動面の差動滑り、スキュー、スピン又は弾性変形による微小滑りなどに対して摩擦と摩耗を減少させます。❷摩擦熱の除去摩擦によって発生した熱、又は外部から伝わった熱を潤滑油が運び去り、軸受の過熱を防止します。一般的には循環給油方式が用いられます。❸軸受寿命への影響軸受の寿命は、軌道輪と転動体との転がり接触面が十分な油膜形成により隔てられている場合は長くなり、油の粘度が低く油膜が不十分な場合は短くなります。❹さび止め潤滑剤の存在により、軸受内部や表面のさびの発生を防止します。❺防じんグリース潤滑の場合、その効果は顕著です。循環給油、ジェット潤滑の場合、軸受付近の異物を洗い落とす効果があります。表34グリース潤滑と油潤滑の比較項目密封構造ハウジング構造温度回転速度荷重保守潤滑剤の取替え潤滑性能ごみのろ過じんあいの侵入グリース潤滑(1)油潤滑簡単高温不可低・中速中程度以下容易やや繁雑良い困難対策容易やや複雑高温可(循環による冷却作用)高速にも可高荷重にも可困難(特に油漏れに要注意)簡単非常に良い容易循環給油でろ過することにより除去可能注(1)一般の軸受用グリースを示します。潤滑53