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Ⅲ7摩擦潤滑直動案内機器の摩擦直動案内機器は、滑り案内に比べて静摩擦(起動摩擦)が小さく動摩擦との差も小さいうえ、速度に対する摩擦抵抗の変化が小さいという優れた特長があります。このため、機械の動力損失が少なく直動案内部での温度上昇も小さいので、運動の高速化が可能です。また、摩擦抵抗が小さく変動が少ないことから、運動指令に対する応答性が高く高精度な位置決めができます。摩擦係数直動案内機器の摩擦抵抗力は、直動案内機器の形式、負荷荷重、速度、潤滑剤の特性などによって左右されます。一般に、軽荷重や高速運動のときは潤滑剤やシールが主な要因となり、重荷重や低速運動のときは荷重の大きさが要因となります。直動案内機器の摩擦抵抗力を決定する要素は複雑ですが、一般的に次の式で表されます。F=μP(3)ここにF:摩擦抵抗力Nμ:動摩擦係数P:負荷荷重Nなお、シール付きのときはこの値にシール抵抗を加算しますが、その抵抗はシールリップのしめしろや潤滑の状態による影響が大きく一様ではありません。直動案内機器の運転中の摩擦係数は、潤滑や取付け条件が適正で普通荷重のとき、およそ表5の範囲にあります。一般的に摩擦係数は小さな荷重域では大きな値を示します。表5摩擦係数シリーズ名動摩擦係数μ(1)クロスローラウェイ0.0010~0.0030ボールスライド0.0010~0.0020ボールスプライン0.0020~0.0040リニアブッシング0.0020~0.0030ストロークロータリブッシング0.0006~0.0012ローラウェイ0.0020~0.0040フラットケージ0.0010~0.0030注(1)シールなしの値です。潤滑の目的直動案内機器に潤滑剤を与える目的は、直動案内機器内部の軌道面と転動体間などの金属接触を防止し、摩擦と摩耗を減らして発熱や焼付きを防止することにあります。軌道面と転動体との転がり接触部に十分な油膜が形成されているときは、負荷による接触応力を低減する効果もあります。油膜の形成が十分にできるよう管理することは、直動案内機構部の信頼性確保のために重要なことです。潤滑剤の選定直動案内機器の性能を十分に発揮させるには、直動案内機器の形式、荷重、速度などを考慮し、適正な潤滑剤の種類と潤滑方法を選定する必要があります。しかし、滑り案内と比べれば潤滑剤に対する依存性は極めて小さいため、給油量は少量でよく補給間隔も延長できるので、保守管理は大幅に軽減することができます。直動案内機器に使われる潤滑剤は、大別してグリースと油があります。グリース潤滑直動案内機器には、一般的にリチウム石けん基グリース(JISちょう度番号2号)が使用されますが、重荷重が作用する用途では極圧添加剤入りのグリースを使用することを推奨します。クリーン環境や高真空環境では、合成油を基油としたものやリチウム系以外の石けん基を使用したものなど、低発じん性能や低蒸発性能に優れたグリースも使われます。これらの環境の用途では、直動案内機器の使用条件に適合し、さらに潤滑性能も満足するよう十分検討する必要があります。表6封入グリース一覧シリーズ名封入グリースCルーブボールスプラインGボールスプラインGアルバニヤEPグリース2[シェルルブリカンツジャパン㈱]グリースの補給間隔良質のグリースでも運転時間の経過とともにその性能は劣化しますので、適宜補給する必要があります。グリースの補給期間は条件によって異なりますが、一般的には6ヶ月ごと、長い距離を往復運動する機械などでは3ヶ月ごとに補給することを推奨します。また、潤滑部品「Cルーブ」を内蔵した直動案内機器は、長期間のメンテナンスフリーを実現した製品で、直動案内機器に不可欠であった潤滑のための給油機構や給油工数が不要になり、維持コストを大幅に削減することができます。


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