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Ⅲ3定格荷重と寿命直動案内機器の寿命直動案内機器は正常な運転状態でも、ある期間を超えて運転するとやがて寿命にいたります。直動案内機器の軌道面や転動体には、常に繰返し荷重がかかり、材料の転がり疲れによるフレーキングと呼ばれるうろこ状の損傷(疲労はく離)を生じ、使用に耐えなくなります。このフレーキングが軌道面か転動体のいずれかに現れるまでの総走行距離を、直動案内機器の寿命といいます。直動案内機器の寿命は、材料の疲労現象によるばらつきがあるため、統計的処理をした定格寿命を使用します。定格寿命直動案内機器の定格寿命とは、一群の同じ直動案内機器を同じ条件で個々に走行させたとき、そのうちの90%の直動案内機器が転がり疲れによる材料の損傷を起こさずに走行できる総走行距離(1)をいいます。注(1)ストロークロータリブッシングは総回転数で示します。基本動定格荷重C基本動定格荷重とは、一群の同じ直動案内機器を個々に走行させたとき、表1に示す定格寿命に理論上耐えるような方向と大きさが一定の荷重をいいます。表1定格荷重シリーズ定格寿命クロスローラウェイローラウェイ・フラットケージ100×103mボールスライドボールスプラインリニアブッシング50×103mストロークロータリブッシング106回転基本静定格荷重C0基本静定格荷重とは、最大荷重を受けている転動体と軌道の接触部中央において、一定水準の接触応力を生じさせる静荷重であり、正常な転がり運動をする許容限界の荷重をいいます。一般的には静的安全係数を検討して使用します。許容荷重F許容荷重とは、最大接触応力を受ける接触部において、転動体と軌道面との弾性変形量の和が小さく、円滑な転がり運動をする荷重をいいます。したがって、きわめて円滑な運動でかつ高い精度を必要とするときは、負荷荷重は許容荷重を超えない範囲で使用してください。動定格トルクT動定格トルクとは、一群の同じボールスプラインを個々に走行させたとき、そのうちの90%が転がり疲れによる材料の損傷がなく、50×103mを走行できるような、方向と大きさが一定のトルクをいいます。静定格トルクT0静定格モーメントT0、TX、TY静定格トルク及び静定格モーメントとは、トルク又はモーメント(図1参照)を負荷したとき、最大荷重を受けている転動体と軌道の接触部中央において、一定水準の接触応力を生じさせる静的なトルク又はモーメントをいい、正常な転がり運動をする許容限界のトルク又はモーメントをいいます。一般的には静的安全係数を検討して使用します。荷重の方向と定格荷重直動案内機器は、荷重の方向にあわせて定格荷重を補正して使用します。寸法表に示す基本動定格荷重、基本静定格荷重を補正して使用しますが、シリーズによって補正する値が異なりますので、各シリーズ解説をご参照ください。